神様、もしあなたが本当にいるのなら
この雪達は、あなたからの贈り物?






温もり






寒くて手が思うように動かない冬の朝。

マフラーと手袋着用、ポケットにはカイロを入れて家を出る。

手袋をしていても、寒い訳で…。自然に自分の息を、手に吐きかける。

今日は今年で一番寒い日らしく、行き交う人々もマフラーと手袋は欠かせないらしい。

わたしは今日が日直だという事を思い出し、少しずつ走りながら、学校へと向かった。








































ガラッ



「…一番乗り!」



教室へたどり着き、ドアを開ける。

まだ教室には誰もいなかった。



あれ?でも、どうして鍵があいてるんだろう…?



「残念じゃったな。二番乗りじゃ」

「へっ?」



背後から聞こえた、独特の訛のある声に振り返る。

そこには、わたしの片思いの相手である、仁王がいた。

「一番乗り!」と叫んでしまった事が恥ずかしくなって

思わずうつむいてしまった…。



「すまんの。朝練があったんで、早く来たんじゃ」

「あ、謝らないでよ!別に一番に来たかった訳じゃないんだから…////」



絶対からかってる…。仁王は喉の奥でクク…と笑うと



「じゃ、日誌は頼むぜよ」



と言って、教室を出ていった。

ん?日誌…?



「もしかして…」



今の言葉に疑問を抱き、黒板へと目を移す。

日直の欄には、わたしと仁王の苗字が書かれていた。

わたしは、嬉しさが込み上げてくるのを感じた…。
































「じゃあ、今日はここまで」



3時間目の終わりの時だった。

わたしは日直なので、黒板を消さなければならない。

黒板消しを手に取り、腕を伸ばしたり曲げたりしながら白い文字を消していく。

チョークの粉が飛び、手で払ってみるけど、全然効果はない。

仕方なく粉の事は諦めて、高い所に書かれた文字を消すのに専念する。

しかし……



「(届かない…)」



わたしは決して、背が高いとは言えない。

なんだか悔しくて飛び跳ねてみるけど、いっこうに届かない。

くそぅ…あの先生、こんな時に背が高いの自慢して…!(違



「何しとんじゃ?」

「なっ」



なんとか消してやろうと、一生懸命腕を伸ばしていると

隣りから別の腕が伸びてきて、あっさりと白い文字を消してしまった。

隣りを見ると自分よりかなり高い、仁王が居た。



「消せんのなら、言いんしゃい。俺だって日直なんじゃきに…」

「うっ…。ありがとうございます…」

「ええ子じゃ」



仁王はそう言って、わたしの頭を撫でてきた。

体温が一気に上がるような感覚に襲われた。



「ちょ、子供扱いしないでよ!////」



照れ隠しに少し睨んでみたけど…。



「顔、赤いぜよ?」

「うっ!////」



やっぱりバレてるわけで…。

仁王はわたしの反応を見て、さも可笑しそうに笑っている。



「おっと…。早く行かんと、授業に遅れるのぅ…」



じゃあな。と言って、仁王は教室を出て行った。

わたしは少しの間、身動きが取れず

もう少しで授業に遅刻しそうになった。






































気がつけば、もう放課後。

他の生徒はすでに教室から出て行った。

教室にいるのは、わたしと仁王だけ…。

二人で残っているってだけなのに、妙にドキドキしてしまう。



「仁王、部活はいいの?日誌は書いとくから、部活行っていいよ?」

「今日は部活は休みじゃ。が日誌書き終えるまで、ここにおる」

「ふ〜ん…」



会話終了。って、もうちょい続けようよ!?

会話を諦め、わたしは黙々と日誌を書く。

仁王は自分の机に座って、外を眺めていた。

























「のぅ、

「ん?何?」



突然、仁王が話し掛けてきた。

少し驚きながらも目線は日誌のままで、耳を傾ける。

















「好ぃとる奴とか、おらんの?」

「はぁ!?」



いきなり発したその言葉に、思わず振り返る。

仁王は相変わらず、外を眺めていた。



「で、おるの?おらんの?」



やっとこちらに目を向けた。

どこか真剣味のある目だった…。



「…居るよ。一応…」

「ふ〜ん…。誰なん?」



あなたですよ、仁王雅治君…。

でも、そんな事言えないから、わたしは日誌に目線を戻し

さぁね。と、言っておいた。



「教えてくれんの?」

「好きな人をあっさりと教える人なんて、少ないと思うんだけど?」

「それもそうじゃの…」



そう言って、仁王は喋らなくなった。

間もなく、わたしは日誌を書き上げ、席を立つ。



「仁王、日誌書き終わったから、帰っていいよ?」

「ああ…。ありがとさん…」



仁王も席を立ったので、わたしは教室を出ようとした。

その時












「ちょぉ、待ちんしゃい」

「は?」












仁王にいきなり腕を掴まれ、一瞬動きが止まる。

びっくりして、仁王をの顔を見ると

今まで見たことがない、真剣な目をしていた。



「な、何…?」



恐る恐る話し掛けてみる。

すると仁王は、



「好ぃとる奴って…、誰なんじゃ?」

「え?」



さっき諦めたと思っていた事を質問された。

また誤魔化そうと思ったけど、仁王があまりにも真剣な目で見てくるので

誤魔化しにくい…。



「頼むけぇ、教えてくれんか?」

「…どうして?」



どうしてそこまで、知りたがるのか。

わたしは不思議で堪らなかった。

仁王は少しして、ゆっくりと口を開いた。



















の事…好きなんじゃ…」

「へ!?////」



仁王からのいきなりの告白。

最初は嘘かと思ったけど、あまりにも真剣な彼の目に

それはない、と思った…。

嬉しくて、堪らなかった。でも、どうしていいのか、分からなかった。



「なぁ…誰なんじゃ?言ってくれたら俺も、諦めがつくんよ」



いつもとは違う、弱々しい声。

まるで、仁王じゃないみたいだった…。

今言わないと、きっと後悔する。

この思いを伝えるチャンスなんだ…。



「わたしの好きな人は
























仁王だよ?」





やっと伝えた思い。

すると仁王は驚いた顔をした。



「本当か?」

「うん、本当////」

「よかった…」



そう言って仁王は、わたしを思いっきり抱きしめてきた。



「ちょ、仁王!////」

「俺をあんなに不安にさせた罰じゃ」



不安だったんだ…。

そう思いながら、わたしは顔を上げた。



「好きだよ、仁王」

「俺もじゃ…



そして、日誌を提出し

二人で帰ることにした。





























下駄箱まで来た時、仁王がマフラーも手袋もつけず帰ろうとしていた。


「えっ!仁王、マフラーも手袋もないの!?」

「ああ…。そういや、忘れとったのぅ…」



今日、今年で一番寒い日らしいのに…。

仁王は少し考えこんだかと思うと、口の端を少し上げ怪しげに笑った。



「じゃあ、こうすればよか」

「あっ!ちょ!」



仁王はわたしのマフラーと、手袋を片方奪ったかと思うと

手袋を自分の左手にはめ、わたしを右手で引き寄せた。



「な、何!?」

「じっとしときんしゃい」



そしてわたしから奪ったマフラーで

自分の首とわたしの首を包んだ。

わたしのマフラーは短いわけではないけれど

特別長いというわけではないので、自然に密着する形になる。



「ちょ、近いってば!」

「それがいいんじゃろ?それとも、はこの状態が嫌かのぅ?」

「うっ…」



嫌なわけがない…。仕方なくそのままの格好で帰ることにした。

しかし、仁王がまた、妙な事を言ってきた。



「で、が右手に手袋をはめる」

「は?」

「いいから早くしんしゃい」

「…分かったわよ。…これでいい?」



わたしは仁王に言われた通り、右手に手袋をはめた。

すると仁王が手袋をしていない方の手で、わたしの左手を握ってきた。



「これなら、二人ともあったかいじゃろ?」

「////…ばーか」。



また照れ隠しをしてみるけれど、多分意味はない。

言いようのない幸せを感じながら、わたし達は一緒に帰った。



「あっ、雪…」



途中、空から白い粉が降り始めた。

まるで、神様がわたし達を祝福してるみたいに…。



「神様からの贈り物…かな?」

「ロマンチックじゃのぅ…は」

「こんな事する仁王だって、人の事言えないんじゃない?」



わたしは繋いでいるほうの手を少し上に上げ

顎でマフラーの事を示した。

すると仁王は



「確かにの…」



と言って笑った。

わたしもそれにつられて笑う。



「本当に好ぃとうよ…

「わたしも…////」



そう言って、わたし達はキスをした。

その日の帰り道は寒いとは思わなかった。

だって、隣りからは…






あなたの温もりが伝わってくる






おわり




あとがき


うわっ…すっごいバカップル…。
すみません!なんか仁王のイメージ壊れてます…。
テスト期間中なんで、頭が可笑しくなってるんです!
では!(逃走)