冷たい。
この悲しみが、滴と共に土に返っていったらいいのに…。
出会って、恋して… 第5話〜雨〜
「、最近すっごく笑顔だけど…何か良い事あったの?」
そう友達に聞かれた。
良い事なんて、1つもない。むしろ、3日前にわたしはショックを受けたんだ。
でも、悲しくて苦しくて、どうしようもないから
他にこの気持ちをどうしていいか、わからないから
ひたすら、笑うしかないんだ…。
その時わたしは、そんなことないよ。と言って、誤魔化しておいた。
笑って誤魔化しても、何にもならないのに…。
昼休み。わたしは図書室へやって来た。
正直、図書委員なんかに、ならなければ良かったと思う…。
暇で暇でしょがないし…。
「あの…この本どこにあるか教えてくれますか?」
「あ…はい!」
机に突っ伏して退屈な時間を過ごしていたわたしに
一人の男子生徒が、仕事をくれた。
顔を上げ、背の高い彼の顔を見る。彼は…
「お、鳳君?」
「えっ、俺の事知ってるの?」
そりゃあ、知らない訳ないじゃない。
君がかっこ良過ぎるせいで、わたしは幾度となく
あの地獄の場へと、君を好きな親友に連れて行かれたんですから。
「ああ…友達から聞いてたし、有名だから…」
「そっか。で…本なんだけど…」
「あ、はいはい」
わたしは鳳君から本の題名を聞き、
その本のある棚の前まで来て、本を取ろうと手を伸ばす。
「(あと、ちょっと…!)」
本は結構高い所にあって、あと少しなのに手が届かない。
すると後ろから別の手が伸びてきて、あっさりと本を取ってしまった。
「いいよ。俺が頼んだんだし」
「あ、うん…」
背が高いって便利だなぁ…と思ってしまった。
「ありがと。じゃあね、さん」
「うん。じゃあ…ね?」
笑顔で去っていく鳳君。
あれ?どうしてわたしの名前、知ってるのかな…?
少し疑問に思ったけど、同じ学年だしね、と考えて気に留めなかった。
放課後になり、一斉に皆が帰り始める。
わたしは先生に呼ばれて、少し帰るのが遅くなった。
下駄箱まで来て靴を履き、さぁ帰ろう!と思った時だった。
外を見ると、地面が薄い茶色と濃い茶色のまだら模様になっていく。
嫌な予感を覚えている内に、地面は一面濃い茶色に染まり
ザァーと音を立てて、強い雨が降り出した。
「うわ…最悪…」
今日は朝から良い天気だったし、傘なんて物は持ってきていない。
もきっと居ないし、友達だって帰っただろう…。
一応降り止むのを待ってみる。
でも、雨は弱まる気配すらない。
雨に流される土を見て、少し羨ましく思った。
わたしのこの悲しみも、この滴と共に土に返っていったらいいのに…。
自然にわたしは前へと進んでいて、おもいっきり雨に当たっていた。
冷たい。でもこれで、わたしの悲しみが消えるのなら、どれだけ良い事だろう…。
雨に当たって、衣服が全部濡れたと思われた時
「おい!何してんだ!!!!」
後ろから怒りを含んだ叫び声が聞こえた。
振り返ると、悲しみの原因となった人物がこちらへ走ってきていた。
彼がすぐ近くに来た瞬間、雨が止んだ。
正確には、わたしの所だけ。
「日吉君…?」
「ったく…何やってんだよ!傘もささずに…」
「傘、持ってないんだよ…」
「だったらせめて、校舎に入るとかしろよ…。雨に当たるのが好きなのかよ」
「嫌だよ…。服濡れるし、寒いし…」
「だったら………?」
雨とは違う、別の滴が目から流れ落ちる。
寒いからでもなく、苦しいからでもない。
でも、何故か滴は流れだした。
「あ、あれ…?なんで泣いてんだろ…?」
「俺が知るかよ…。とりあえず、泣きやめよ」
「無理だよ…。だって、止まらないんだ…よ……」
「…だったら、止まるまで泣けよ…」
「えっ?」
その瞬間、わたしは日吉君の腕の中に居た。
泣きやめと言われたのに、余計に涙は流れだす。
今はもう、あの時の事なんか考えたくなかった。
わたしは日吉君の腕の中で、涙が枯れるまで泣いた。
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あとがき
やっと5話書けたよ…。シリアスむずい…。
今回は鳳も出してみました〜vv
なんか流れで、ヒロイン図書委員になっちゃったよ…。
それでは、また次回。