怖い怖い怖い。



わたしは一体…どうすればいいの?















キミのタメ















荒れた土地に放り出されたわたしは



ただただ、赤い血の海を見て震えるしかなかった。




今更だけど、これが夢であって欲しい。



怖い怖い夢。そうであって欲しい。




でも、わたしの願いとは裏腹に、地面の感触はとても鮮明だった。






「っ…誰か…助けて……」






いくら泣いても、声をかけてくれる人なんて居ない。



一人ぼっちが、こんなに寂しいなんて思わなかった。







そんな時、後ろの方から足音が聞こえた。



ザッ、ザッという音が、だんだんと近づいてくる。



正体を知りたいとは思うけど、怖くて振り向けない。



不安と恐怖ばかりが募って、悪い方向ばかりに考えがいく。



音がすぐ後ろで聞こえて、わたしは目をギュッと瞑った。






「おい、お前何してんだ?」



「ひっ!」






やや低い男の人の声が聞こえ



わたしは、驚いた反動で振り返ってしまった。



その男の人は短髪で帽子をかぶってて…とてもカッコイイ人だった。



けれど、その手には拳銃が握られていた。






「おーい。お前、生きてるか?」






そう言って男の人は、わたしの目の前で拳銃をチラつかせた。



わたしは余計に怖さが増し、とうとう気絶してしまった…。






「あ、こいつ…気ぃ失いやがった…」



「宍戸さーん!…何してるんですか?」



「おー、長太郎。変な奴見つけたんだけどよ。気絶しちまったんだ」



「死んでる、の間違いじゃないですか?」



「いや、最初は声だしたから…生きてるハズ…」



「どーします?殺しちゃいますか?」



「…いや、雑用くらいには使えるんじゃないのか?連れて帰ろうぜ」



「…そうですね。今丁度、雑用係が死に過ぎて困ってましたし」



「んじゃ、決定。長太郎、かつげ」



「はい」






そして気を失った一人の少女を



拳銃を持った二人の男が、どこかへと連れていった。













































* * *



…あれ?わたし…一体どうなったんだっけ…?



確か…拳銃持った男の人に声かけられて…怖くなって…



それから…










「お、目ぇ覚ましたな。気絶女」










うっすら開いている目を、声のする方へと向ける。



そこには、見覚えのある黒いスーツの男の人が立っていた。




ん…?この人って、確か……






「け、拳銃男…!



「あ゙?なんだよ、いきなり」






あの時の恐怖がよみがえり、わたしは後ろへとあとずさった。



しかし…










ボフッ










「あれ?起きたんですか?」



「ひぃっ!!!」






誰かにぶつかり、さっと振り返ると



長身で黒いスーツを着た優しそうな男の人が、コーヒーを作っていました。



しかし、わたしの目線はすぐさま腰にある拳銃へと向いた。




小さな部屋に拳銃を持った男が二人…。



しかも、長身の人の拳銃をよく見てみると血痕のような物があった。



もしかしてわたし…殺されちゃう?






「しっかし…お前、何者だ?あの辺りで一人でつっ立ってるなんて…



自殺願望者か何かか?



「ん、んな訳ないじゃないですか!」






ありえない事を言われ、わたしは思わず大声で否定した。



それを見て、長身の人はクスクス笑う。






「もう、すっかり元気になりましたね」






そう言って彼は、わたしにコーヒーを出してくれた。






「あ、ありがと…」






わたしはもらったコーヒーを一口飲んだ。



コーヒーは少しほろ苦かったけれど、何故か安心できた。



(なぁんだ…思ったより、怖くない所なのかも…)



そう思う事だってできた。






「あ、あの…ここってどこですか?」






シンプルで綺麗に片付いた部屋。



怖がってばかりで、周りを良く見ていなかったけれど



わたしをここまで運んで、ベットに寝かせてくれていたみたい…。






「ああ、ここか?俺らの部屋だけど?」



「あ、そういう意味じゃなくて…」



「ここは氷帝と山吹が拠点にしてる城ですよ。略して『氷山城』」






長身の人はわたしの聞きたかった事に、ちゃんと答えてくれて



コーヒーを持ったまま、近くの椅子に座った。






「氷帝と山吹…?」



「げっ!お前、もしかして知らないのかよ!?」



「わ、悪いですか?」






その発言にムカついたわたしは、拳銃男をキッと睨んだ。



最初よりは…だいぶ余裕が出てきたのが、自分でも分かった。






悪い。それくらい知っとけよな…。いいか、



氷帝グループと山吹グループの連合軍は、この世界の3大勢力の内の一つだ。



俺達は、残り2つの勢力と対立してる。つまり、毎日殺し合ってんだ」



「殺し合い!?」



「驚く事じゃねぇよ。ここでは日常茶飯事だ」






本当に平然と話す、拳銃男。



殺し合いが日常茶飯事って…やっぱり物騒な所だ…。






「で、二人はどっちに入ってるの?」



「俺達は氷帝です。まぁ、ここに居れば、いずれ山吹の連中とも会いますよ」



「はぁ…」






氷帝とか山吹とか殺し合いとか…



よく分からない事ばかりだけど、少しだけこの世界の事が知れた気がする。



わたしがまた、コーヒーを一口飲むと



拳銃男が椅子から立ち上がり、わたしの方をじっと見てきた。






「もう、大丈夫なのか?」



「え、はい。もう大丈夫です」



「そうか、じゃあ…俺達のリーダーの所まで来てもらうぜ」



「え?」






どうやらわたしは



大変な事に巻き込まれてしまうみたいです…。














































ガチャ



「おい、跡部〜。連れてきたぜ」



「し、失礼します…!」






拳銃男と長身の人に案内され、連れてこられた部屋。



とても気品あふれるドアの向こうには



気品の漂う、黒いスーツを着たとてもカッコイイ男の人が居ました。




わたしは思わず、緊張してしまい



少し声が上ずってしまった…。(恥ずかしい…)






「ごくろう。で…その妙な格好した女が、例の自殺願望者か?」



「みょ、妙…!?」



「あ、そういえばお前…確かに妙な格好してんな」



「も、もしかして…////」






わたしはサッと自分の今の格好見ると



嫌な予感は的中。わたしは元の世界の格好のまま。



つまり、寝起きのパジャマ姿だった…。




め、めちゃくちゃ恥ずかしい…!なんで今まで気付かなかったの!?






「まぁ、いい…。あとで着替えておけ」



「は、はい…」






そういえばここの人って、黒スーツで美形の人がやたら多い…。



ホント、妙な世界に来ちゃったな…。






「話がそれたが…今日からお前は、ここの雑用係だ。分かったな」



「はぁ?」






『雑用係』。リーダーの人は、平然とそう言った。



全く意味が分からない…。どうしてわたしが、いきなり雑用係になってんの?



わたしは頭にきて、リーダーの人をキッと睨みつけた。






「どうして、わたしが雑用係になってるんですか!?



わたし、今さっきココに来たばっかりなんですよ!」



「あのなぁ…どうして俺様達が、お前を殺さずにいてやってるか分かってるのか?」



「え…」



「分かってねぇみたいだな」






チャキという音がして、硬い物がわたしの後頭部につきつけられる。



直感でその物体が銃だと確信すると、わたしは恐怖で動けなくなった。






「今、俺達の所では結構な数が殺されてるお陰で、人数不足の状態だ」



「かと言って…女のお前を戦場に出すのは無意味。



そうなれば…雑用係として働かすのが妥当だろ?」



「さ、どうします?」






目の前にはリーダーの男の人。そして、後ろには拳銃男が居て



わたしの頭に銃をつきつけている…。



加えて、ドアの所に長身の銃を持った人が待機しているという



かなり危ない状況…。逃げ出すのは不可能らしい…。



そして、わたしに利用価値が無いと分かれば…きっと殺される…。



そうなれば…わたしの選択肢は一つ…。






「雑用係…やります……」



「ま、それが一番賢いだろうな…。お前、名前は?」






ここまで来たら…もうひき返せない…。






 です…」



「俺様は氷帝のリーダー、跡部 景吾だ。覚えておけ」






跡部という人がそう言うと、わたしの頭から銃が離された。



戸惑いながらも振り返ると、拳銃男が銃をしまっていた。






「そう言えば…名前まだ言って無かったな。俺は、宍戸 亮だ」



「俺は鳳 長太郎って言います」



「は、はい…。宜しくお願いします…」






さっきのほんの一瞬の出来事で、この二人への印象はかなり変わった。



やはりここは恐ろしい所。



この人達が、わたしを生かしてここまで連れてきたのは



わたしを雑用係にするため。つまりは自分達のためだ…。




ちょっとでも安心した自分が…馬鹿みたいだ……。






「お前の仕事と部屋は…同じ雑用係の壇に教えてもらえ」



「壇…?」



「山吹の人だよ。そこまでは俺が案内します」



「ありがと…」






そして、わたしは部屋を後にした。



とても綺麗な廊下が、なぜか少し濁って見えた…。















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あとがき


最初に出てきたのは宍戸とちょたでした〜。

氷山城ってありえない・・・。他の所はどうするんだろ・・・。(知るか

あっははは!これからどうしようか…(ぇ